礼をすることが体と心に及ぼす作用
日本には「礼」をするという習慣、所作があります。
礼法に関わらず、日本古来からの所作とか着物とかには身体に及ぼす効能があるのです。
躾や形で受け継がれてきたのが日本の文化。
で、僕は身体を扱う仕事や空手道という文化の伝承者として、ちゃんと伝えていきたいと思う。
「礼」という所作。
今日は「立礼」ということでお話します。
礼法に限らず、日本の形式には正式、略式がある。
ただ、正式を知らずして略式とは言えない。
礼には形だけでなく呼吸、気持ちも加わり、初めて礼と成される。
体を前に屈する。
これは前屈という動きになる。
腰の骨は5つあるけど、1番目から5番目で基本的な体の動きを司る役割がそれぞれにある。
前後
左右
捻り
開閉
上下
その中で、この前後(動き的には上下)は、頭と深く関わる作用があるのです。
実は、この礼の所作は、頭を沈静させる役割がある。
武道でも、試合や乱取りにしても、必ず礼を行ないます。
相手を敬うという武道の根底の思想はもちろん、この所作により頭が沈静されるということ。
感情に任せて闘うのではなく、冷静に技を競い合うため。
お互いを尊重し合い、自分の心をコントロールして冷静な判断と、やりすぎてしまわない感情の沈静。
これが礼の効能。
武道で礼儀が身につくのは、ただ口うるさく指導されるだけでなく、こういう所作の積み重ねで心身ともに身についてくるのです。
きっとそれを感覚的に分かっていたからこそ、古人は礼という所作を大切にしたんだと思う。
背中を丸めず、頭から腰までまっすぐに。
呼吸に合わせて体を倒し、一呼吸入れて呼吸に合わせて体を起こす。
これだけ。
こういった所作をいかに美しくしていけるか。
その形から体や心を整える。
整った体と心は、人の持つ能力を十分に発揮し高めてくれる。
日本の美しさが表れている所作ですよね。
昔の「躾」は、まさに漢字の成り立ち通り「身を美しく」することで内面に変化を起こす。
これが躾だったんですね。
言葉で分からせることではないのです。
身をもって見せて教え整えていく。
こうして今でも日本の文化形式として礼法が息づいてる。
素晴らしいことです。
分からなくても、子供の頃にしていた所作は心身の深い部分には、ちゃんと息づいている。
だからこそ、日本は海外と比べて圧倒的に群衆が暴徒化するようなことが少ないように思うのです。
礼の効能。
改めて見直していく必要があるのを感じます。
〇〇してはいけない、とつまらないルールで縛るのではなく。
こういうことで人を育てていくことの方が、自然と平和が保たれる国であると思うな。
品性のある体と心。
それは礼を見た人が感じること。
「禮」
旧字では、
豊かさを示す
と書いて「礼」だった。
まさに字の如く。
そういう礼法を体現できる人でありたいな。